金利が上がると、なぜ債券価格は下がる?
利率と利回りの小さな違い
「金利が上がったので、債券の価格が下がりました」。ニュースで聞くと、少し不思議ですよね。金利が高くなるなら、持っている債券もうれしい話では? その疑問をほどく鍵は、すでに決まっている受取額と、今から買う人が払う値段を分けること。コーヒー片手に、一年後の101円を眺めてみましょう。
固定利付債では、約束された利子は市場金利に合わせて増えません。他の条件が同じなら、市場が求める利回りが高くなるほど、同じ将来の受取額につく現在の価格は低くなります。利子を決める「利率」と、購入価格も関わる「利回り」は別の数字です。

利子はそのままでも、値札は動く
債券は、国や企業などがお金を調達するために発行するものです。ここでは、利率があらかじめ決まり、一定の利子を受け取る一般的な固定利付債を考えます。満期に払い戻す金額の基準となる額面、利子の計算に使う利率、いつ償還するかという期限を確認するところから始めましょう。
たとえば額面100円、年の利率1%なら、1年分の利子は1円です。市場でこの債券に99円の値段がついても、それだけで利子が0.99円に変わるわけではありません。固定されているのは額面に対する利子の条件で、売買する価格まで固定されているわけではないのです。
新しく買う人からすると、周りに同じ程度の信用力・同じ残り期間で、より高い収益を期待できる選択肢があれば、古い条件の債券に以前と同じ値段を払いたいとは思いにくくなります。その調整が、価格の変化として現れます。日本証券業協会も、一般に金利上昇と債券価格の下落は逆の関係にあると説明しています。[1]
数字がいくつも並んでいたら、まず「利子の条件」と「買う値段」に分けてみましょう。利率だけでお得かどうかを決めずに済みます。
利率と利回り、何が違う?
利率は、額面に対して利子がどれだけつくかを表す割合。対して利回りは、投じたお金に対する年あたりの収益の割合です。債券では利子だけでなく、購入価格と償還額の差も関わります。日本証券業協会の用語集でも、投資元本に対する、利子を含めた年あたりの収益として説明されています。[2]
| 見る数字 | 何に対する割合? | 価格が変わると? |
|---|---|---|
| 利率 | 額面に対する利子 | 固定利付債の約定利率は変わらない |
| 利回り | 投じたお金に対する収益 | 同じ受取額でも、購入価格が変われば変わる |
利回りには、利子だけを見るものや、償還までを考えるものなど、計算の仕方による違いもあります。「利回り2%」という表示だけで比較を終えず、どの計算方法で、税引前か税引後か、費用を含むかを確かめたいところです。ここからの例は、その入り口として、受け取りが一度だけの仕組みに絞ります。
一年後の101円は、今いくら?
ここで小さな問いです。ちょうど一年後に合計101円を受け取る約束に、今日100円を払いますか? それとも99円ならどうでしょう。受け取る額が同じでも、安く買えたほうが、払ったお金に対する収益の割合は大きくなりますよね。
以下は実在の商品ではない架空の計算例です。額面100円、固定利子1円を、両方まとめて一年後に受け取ると仮定します。途中の支払いはなく、税金・手数料・経過利子を除外し、約束どおり支払われるものとして計算します。実際に100円単位で買えるという意味ではありません。
一年の利回り =(101円 ÷ 今日の価格 − 1)×100
今日の価格 = 101円 ÷(1 + 利回りを小数で表した数)
利回り2%を求めるなら:101 ÷ 1.02 ≒ 99.02円
| 求める一年の利回り | 今日の理論価格 | 一年後の受取額 |
|---|---|---|
| 0.5% | 約100.50円 | 101円 |
| 1% | 100.00円 | 101円 |
| 2% | 約99.02円 | 101円 |
表は計算結果を小数第2位に丸めています。利回りが高い行ほど、価格が低くなっていますね。これが「金利が上がると債券価格が下がる」をつかむための基本の形です。ここでいう金利は、市場で比較対象となる利回りの水準のこと。政策金利の発表と、すべての債券価格が同時に一定幅で動く、という意味ではありません。
この式を、そのまま残り10年で何度も利子を受け取る債券に当てはめることはできません。その場合は、受け取る時期の異なるお金をそれぞれ考える必要があります。また、実際の価格は発行体の信用状態や売買のしやすさなどにも左右されます。「金利だけで値段が決まる」と覚えないのが大切です。

満期まで持てば、気にしなくていい?
満期までの受取条件と、途中で売るときの価格は、分けて考えます。市場価格が下がっていても、それだけで額面や固定利子の約束が書き換わるわけではありません。ただし、予定より早く現金が必要になって売却するなら、その時点の価格で損失が出る可能性があります。売りたくても十分な買い手がいない流動性のリスクもあります。[1]
たとえば、一年後に使う予定のお金を、満期がずっと先の債券に回したらどうでしょう。予定どおりの時期に売る必要があれば、その日の価格を避けて通れません。利回りの数字を見比べる前に、「このお金を使うのはいつ?」とカレンダーを開いてみるのも、ひとつの整理の仕方です。
そして「満期まで持つから絶対に安心」とも言い切れません。発行体が約束どおり払えない信用リスクは残ります。満期に戻る額面と、あなたが購入した価格が同じとも限りません。額面100円の債券を100円より高く買ったなら、償還時の差額も含めて収益を見る必要があります。
なお、この記事の市場価格の説明を、個人向け国債の中途換金制度にそのまま当てはめないでください。財務省の個人向け国債には「変動10年」「固定5年」「固定3年」があり、変動10年は半年ごとに適用利率が変わります。原則として発行後一年から中途換金が可能ですが、所定の調整額が差し引かれる仕組みです。一般的な債券の市場売却とは条件が違うため、個別の商品概要を確かめましょう。[3]
使う日が決まっているお金なら、満期と換金の条件を先に確認しておきましょう。「必要な日に、どうやって現金に戻す?」まで考えると、比較するポイントが見えてきます。
次のニュースで、確かめてみたいこと
- 何の金利? 政策金利なのか、市場で取引される債券の利回りなのか。
- 何が固定? 利子の条件か、償還額か。今の売買価格まで固定されてはいないか。
- いつ使うお金? 満期前に売る可能性と、そのときの値下がり・売りにくさを考えたか。
次に「金利上昇、債券下落」という見出しを見かけたら、一年後の101円を思い出してみてください。受け取る約束が同じでも、今日の値札は変わる。利率と利回りの違いが見えるだけで、ニュースの一文が少し立体的になるはずです。
参考にした一次資料
- 日本証券業協会「個人向け社債の特徴やリスク、価格情報の入手方法」(PDF):信用・価格変動・流動性のリスク。
- 日本証券業協会「(債券の)利回り」:利回りの定義。
- 財務省「個人向け国債商品概要」:商品区分と中途換金の条件。
資料確認:2026年10月29日。計算例は仕組みを学ぶための仮定で、実際の市場価格や将来予測ではありません。本記事は一般的な学習情報であり、特定商品の売買推奨や利益・元本の保証を行うものではありません。