ETFの値段は一つじゃない?
市場価格と基準価額を見分けよう
ETFの情報を開いたら、証券会社の画面と運用会社のページで値段が違う。「どちらかが間違い?」と気になりますよね。実は、同じETFでも、何を表す数字なのか、いつ計算されたのかが違うことがあります。今日はコーヒー片手に、値段の横にある小さな名前を読んでみましょう。
ETFを取引所で売買するときの価格が「市場価格」。保有資産から計算する値段が「基準価額」。取引時間中の資産価値を推定する参考値が「iNAV」です。名前・時刻・表示単位をそろえてから比べるのが、最初の一歩です。

ETFは、取引所で売買できる投資信託
ETFは「上場投資信託」と呼ばれる、投資信託の一種です。取引所に上場しているため、投資家は証券会社を通じて市場で売買します。中身には日本株、外国株、債券、金などさまざまなものがあり、商品の運用方針によって異なります。[1]
ここでは、中身のある「かご」を思い浮かべてみましょう。かごに入った資産の価値を足し合わせる見方と、そのかごを市場でいくらで売り買いするかという見方があります。同じかごを見ていても、問いが違うのです。
ただし、この例えは価格の仕組みをつかむためのもの。どのETFにも、たくさんの株が均等に入っているわけではありません。特定の資産に投資する商品もあり、指数への連動を目指すものだけでなく、アクティブ運用型もあります。まず正式名称と運用方針を確認して、「何のかごなのか」を確かめましょう。
「ETFなら、どれも同じ」ではないんですね。値段を比べる前に、中身の名前を読むところから始めましょう。
3つの値段には、それぞれ役割がある
ひとつ目は市場価格です。取引所で売りたい人と買いたい人の注文が合って、売買が成立する価格です。画面の現在値や終値がこちらに当たります。注文状況を反映するため、取引時間中に変化します。基準価額が表示されていても、その数字で市場の売買が約束されるわけではありません。[2]
ふたつ目は基準価額(NAV)。保有資産を評価し、費用・未払金などの負債を差し引いた純資産を口数で割って計算する値段です。運用会社が通常、毎営業日に1回計算します。「中身から計算した値段」と考えると入りやすいでしょう。表示が1口当たりなのか、100口・1万口当たりなのかも確認が必要です。[3] [4]
そして、取引時間中の目安となるのがiNAV(インディカティブNAV)です。保有資産の現在の価格などを使い、1口当たりの資産価値を推定します。JPXは、市場価格・基準価額と合わせた3種類の価格として説明しています。iNAVは参考になる推定値であり、その価格で売買できる保証ではありません。[5]
| 名前 | 何の数字? | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 市場価格 | 市場で取引される値段 | 現在値・終値の別、表示時刻、注文状況 |
| 基準価額 | 保有資産から日々計算する値段 | 基準日、表示口数、通貨 |
| iNAV | 取引時間中の資産価値の推定値 | 提供の有無、更新時刻、算出の条件 |
数字だけを切り取らず、欄の見出しと日付まで一緒に読む。たったこれだけで、「別の役割の値段を比べていた」という行き違いを減らせます。
1%高い。でも、何と比べた1%?
ここからはすべて架空のETFによる計算例です。実在商品の価格・成績ではありません。全数値を円建て・1口当たりにそろえ、分配金や手数料・税金は考えない単純な場面とします。
昨日の基準価額が1,000円、今日のある時点の市場価格が1,010円なら、単純な差は10円、比率は1%です。でも、この1%を見ただけで「中身より高く買われている」と言えるでしょうか。昨日の値段と今日の値段では、見ている時計が違います。
| 比べるもの | ケースA | ケースB |
|---|---|---|
| 昨日の基準価額 | 1,000円 | 1,000円 |
| 今日の市場価格 | 1,010円 | 1,010円 |
| 同時点のiNAV(仮定) | 1,010円 | 1,000円 |
| iNAVに対する差 | 0% | +1% |
ケースA:(1,010 ÷ 1,010 − 1)×100 = 0%
ケースB:(1,010 ÷ 1,000 − 1)×100 = +1%
Aでは、今日の推定値も1,010円です。昨日との価格差はあっても、この仮定では同時点のiNAVとの差はありません。Bでは、同時点のiNAVに対して市場価格が1%高い状態です。市場価格が推定資産価値より上ならプレミアム、下ならディスカウントと呼ばれます。[5]
ここで計算したのは、あくまで比較の物差しです。iNAVも推定値なので、0%なら適正価格、1%なら割高と断定するための判定表ではありません。「この差は、いつの何と比べた差?」と問い直すことに意味があります。
同じ「1%」でも、比べる相手で意味が変わるんですね。数字の隣に、時刻もメモしておきたいです。
差があるから、必ずお得とは限らない
市場での需要と供給が変われば、資産から計算した値段と市場価格が離れることがあります。JPXは、こうした乖離に加え、取引量や注文量が少なく、想定する価格で売買しにくくなる流動性のリスクも挙げています。[6]
ETFには、設定・交換などを通じて保有資産と市場価格の連動を支える仕組みがあります。ただし、それが止まると差が広がったり、続いたりする場合もあります。たとえば、海外の株や債券を対象にする商品では、現地市場の休場が設定・交換の停止につながることがあります。運用会社の重要なお知らせも、一緒に読む理由はここにあります。[6]
だから、ディスカウントという言葉だけで「安く買えば、元に戻って必ずもうかる」とは考えられません。比較に使った値が古いかもしれませんし、買った後に資産そのものの価値が下がることもあります。差が縮む時期や利益は約束されていないのです。
iNAVの提供状況も商品ごとに確認しましょう。JPXには配信先や対象ETFの情報がありますが、見つからない値を自分の想像で埋める必要はありません。確認できないときは、いったん立ち止まるのも立派な選択です。[5]
数字の前に、ラベルを3つ確認しよう

次にETFのページを開いたら、すぐに購入の判断をする代わりに、下の3項目を探してみませんか。気になる商品ひとつを読むだけでも、価格欄の見え方が変わります。
- 名前:いま見ているのは市場価格、基準価額、iNAVのどれ? 同じETFの同じ銘柄コード?
- 時刻:基準日や更新時刻はいつ? 前日・当日の数字を取り違えていない?
- 単位:円などの通貨と、1口・100口・1万口などの表示単位はそろっている?
さらに運用会社の公式ページで、保有資産や運用方針、費用、重要なお知らせを確認します。価格差だけでは、その商品が自分に合うかまでは分かりません。何に投資しているか、どんなリスクがあるかも大事な判断材料です。
今日は、値段をひとつ覚えるより、「どの値段?」と聞けたら十分です。市場での値段、中身から計算する値段、その時点の推定値。役割の違う数字を同じ棚に並べず、ラベルをそろえて読む。次のコーヒーが冷めるまでに、価格欄をひとつ、ゆっくり見直してみましょう。
参照した一次資料
確認日:2026年10月28日JST。本文と架空例は独自に構成し、公式資料の図・写真・文章を転載していません。
- JPX「ETFの概要:特徴」 — ETFの種類・投資対象。
- アセットマネジメントOne「ETF用語集:取引価格」
- 野村アセットマネジメント「投資信託・ETFの違い」 — 価格の定義と表示口数。
- JPX「投資のリスク(ETF)」 — 乖離・流動性・設定交換停止のリスク。
一般的な学習のための記事です。特定のETFや取引を推奨するものではなく、将来の利益を保証しません。投資には元本割れ等のリスクがあります。計算例はすべて架空です。