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投資のきほん

売上が増えたのに、利益は減った?|
カフェの数字で読む決算の入口

/ ひろみの株窓 / 約8分

駅前のカフェに列ができている。「あのお店、売れていそうだな」。そんな場面を思い浮かべてください。ところが、そのお店の数字を開くと、売上は伸びたのに利益は減っていた――。この「増収減益」は、いったいどうして起こるのでしょう。架空のカフェのひと月をたどると、決算ニュースの見え方が少し変わります。

売れた金額と、費用を引いて残った金額は違います。

売上が100万円から120万円へ増えても、材料などにかかる費用がそれ以上に増えれば、残る利益は小さくなります。「いくら売れたか」の先に、「何にいくらかかったか」を一緒に並べてみましょう。

コーヒーや注文票、材料の瓶が並ぶカフェのカウンターを描いた水彩イラスト
にぎわうお店にも、材料や運営の費用があります。架空のカフェを考えるためのイメージイラストです。

カフェの売上100万円は、そのまま利益?

まずは、架空のカフェの帳簿を一緒に開いてみましょう。ひと月に売れたコーヒーや食事の合計は100万円。レジに並ぶ数字だけを見ると頼もしく感じますが、豆やミルク、食材を仕入れるお金も、お店を動かすお金も必要です。100万円全部がもうけとして残るわけではありません。

企業の損益計算書は、ある期間の売上、費用、利益を表す書類です。日本公認会計士協会も、どこでどれだけ利益が出たかを段階的に確認するものとして説明しています。[1] ここでは日本基準の一般的な表示を入口に、売上高、売上原価、販売費及び一般管理費、営業利益を見ていきます。金融業などの業種や会計基準によって表示の仕方は異なるため、すべての決算書が同じ並びだとは限りません。

決算書では、売上高から売上原価を引いた段階を「売上総利益」と呼びます。そこから販売や会社の運営にかかる「販売費及び一般管理費(販管費)」を差し引くと、営業利益になります。[2] 長い名前ですが、今は丸暗記しなくて大丈夫。売上から費用を順に引いていく、と考えて下の計算を見てください。

架空のカフェの、ひと月の計算

売上100万円 − 売上原価40万円 = 売上総利益60万円

売上総利益60万円 − 販管費50万円 = 営業利益10万円

翌年の同じ月の売上は120万円になったとします。このあと、費用も並べて比べてみましょう。

このカフェも金額も、仕組みを確かめるための架空例です。実際のお店の決算や筆者の経営体験ではありません。費用は簡略化しているので、10万円は税金や借入利息まで引いた最終利益でも、銀行口座に残った金額でもない点に気をつけてください。

ひろみ

「利益」と書かれていたら、その前の名前も一緒にメモしてみましょう。営業利益と最終的な利益を取り違えないだけでも、ニュースと決算書をつなげやすくなります。

売上20%増でも、利益が減るわけ

翌年の同じ月、お店の売上が120万円になりました。前年より20万円、20%の増加です。ここだけ読むと順調そうですよね。では費用の欄へ目を移してみます。売上原価は60万円、販管費は54万円。引き算をすると営業利益は6万円で、前年の10万円から4万円、40%減っていました。

架空のカフェ、同じひと月を比べる例(単位:万円)
見る数字前年同月今年同月
売上高100120
売上原価4060
売上総利益6060
販管費5054
営業利益106
売上高営業利益率10%5%

ここで、売上100円につきいくら営業利益が残ったのかを考えてみましょう。前年は10円、今年は5円。この割合が「売上高営業利益率」です。営業利益÷売上高×100で求めるので、前年は10÷100×100=10%、今年は6÷120×100=5%になります。金額の大きさだけでは気づきにくい変化が、割合にすると見えてきます。

表を上から指でたどると、売上が20万円増えた分だけ売上原価も増え、売上総利益は60万円のままだと分かります。そこから引く販管費が4万円増えたので、営業利益は4万円減りました。「増収減益」のひと言を、このカフェの引き算として説明できるようになりましたね。

ただし「利益率が何%なら必ず良い会社」という共通の合格点はありません。商品を仕入れて売る会社と、ソフトウェアを提供する会社では、費用の構造が違います。まず同じ会社の同じ長さの期間を比べ、他社へ広げるなら事業や会計上の条件もそろえます。

費用が増えた理由は、一つではない

では、このカフェは悪くなったのでしょうか。表だけでは、まだ答えを出せません。材料の仕入価格が上がったのか、売れるメニューが変わったのか。それとも、人を増やしたり新店の準備をしたりしたのか。同じ費用の増加でも、背景は違います。

たとえば、豆やミルクの仕入価格が上がった場合と、材料を多く使うメニューの注文が増えた場合では、同じ売上原価の増加でも事情が違います。ここは想像で埋めず、会社の決算説明資料へ戻るところです。価格、販売数量、商品の組合せについて何と説明しているでしょう。費用の分類も事業や会計方針によるため、「人件費なら必ず販管費」と全社に当てはめないようにします。

費用の理由を確認するため、資料と材料の瓶を並べた机の水彩イラスト
増えた費用の背景を、資料の説明から探すイメージイラスト。実際の企業資料や取引画面ではありません。

資料に「将来のための支出」と書かれていたら、そこで安心して読み終えず、目的と時期まで探してみてください。たとえば新しいお店の準備なら、何を目指し、いつごろ効果を見込んでいるのか。会社の見通しは約束ではありません。「今回だけの負担なのか」「次の期も続くのか」をメモしておくと、次の決算を開く理由になります。

ひろみ

「広告費が増えたらしい」で終えずに、「何のため?」「いつ効果を確かめる?」と一行ずつ書いてみましょう。分からなかった点を残すメモは、次の決算を読む手がかりになります。

利益と、手元のお金も分けておこう

カフェの帳簿を閉じる前に、もう一つ。営業利益10万円と聞いて、銀行口座も10万円増えたと思いませんでしたか。利益と現金の動きには、ずれが生まれることがあります。たとえば売上代金を後から受け取る取引なら、売上を記録する時期と入金する時期が同じとは限りません。

そのずれを考えるときに開きたいのが、キャッシュ・フロー計算書です。日本公認会計士協会の解説では、一定期間のお金の出入りを確認し、掛け売りなど現金の動かない取引と分けて読む考え方が示されています。[3] 損益計算書で利益を読み、別の書類で入金や支払いを確かめる。最初から全部を理解しようとせず、役割の違う二枚がある、と覚えておきましょう。

実際の決算は、この順番で読んでみる

気になる会社の決算資料を開くなら、最初のメモは三つだけでも構いません。「売上はどうなった?」「営業利益は?」「その理由は?」。ただし、並べる数字の期間と単位は先にそろえます。半年の累計と一年の通期、百万円と億円を取り違えると、引き算が正しくても比較になりません。連結か単体か、会計基準は同じかも確かめてください。

決算資料の横に置く確認メモ
順番確かめること
1:前提をそろえる同じ長さの期間、単位、連結・単体、会計基準か
2:数字を並べる売上高、営業利益、売上高営業利益率はどう変わったか
3:説明を探す費用や商品構成の変化を、会社はどう説明しているか
4:問いを残す一時的か続くのか、次に何を確かめたいか

次に「売上は増えたのに利益は減った」というニュースを見たら、このカフェの表を思い出してみてください。売上20万円増、その分増えた売上原価、さらに4万円増えた販管費。数字を順にたどると、見出しの奥にある変化を自分の言葉で説明できます。気になる会社でも、まずは一つの変化とその理由を探すところから。そこまで分かっても株価の上昇や投資の成功が決まるわけではありませんが、会社を知るための問いは、きっと具体的になります。

出典・確認した資料

確認日:2026年11月2日。本文のカフェ・金額・増減率は仕組みを説明する架空例で、実績や予測ではありません。

  1. 日本公認会計士協会:損益計算書(P/L、I/S)(期間の売上・費用・利益を表す書類の考え方)
  2. 企業会計基準委員会:企業会計原則・損益計算書原則(日本基準の一般的な営業利益の計算関係)
  3. 日本公認会計士協会:キャッシュ・フロー計算書(お金の流れと掛け売りの説明)

一般的な学習情報であり、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。株式投資は値下がりなどで元本を下回る場合があります。画像は説明のためのイメージイラストです。